ウルトラマンの話

暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人

2020年12月16日

この記事は2020/12/16に書いたものです。

皇帝

なんとも厳格で高貴な響きである。

同じ王を示す言葉でも「国王」と「皇帝」だとなんとなく後者の方が凄い感じがするものだ。

ちなみに、言葉の意味合い的にも皇帝の方が位が高い。「国王」はひとつの国を収める王を指す言葉だか、「皇帝」は複数の国を支配する王を指す言葉であり、一人の皇帝の下に複数の国王が存在しているのである。

ちなみに似た様な言葉に「帝王」というものもあるが、こちらは皇帝とほとんど同じ意味であり、使われた地域の違いぐらいしか違いがないそうだ。

さて、皆様はウルトラシリーズに「暗黒の皇帝」の名を持つ存在がいる事をご存知だろうか。

地球に降臨し、人々を恐怖に陥れた暗黒の皇帝。

その名は・・・

暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人

初登場

初登場となったのは「ウルトラマンタロウ」第25話。

しかし、ここでは絵にシルエットが書かれていたのみで本人が登場することはなかった。

タロウ本編から3万年前、様々な宇宙人や怪獣を引き連れウルトラの星へ侵攻したがウルトラの父によって撃退された。と語られる。

その後も本人が登場することはなく、タロウ劇中では存在が仄めかされる程度で終わっている。

一説によると、タロウ本編に登場したテンペラー星人が元々はエンペラ星人の予定でありスタッフの伝達ミスでよく名前の似た別の宇宙人になってしまったともいわれている。

その後もウルトラシリーズが長きにわたる休眠期に入ったり、シリーズ再開後もM78星雲が登場しなかったりでエンペラ星人の存在は徐々に忘れ去られていった・・・。

(C) 1973 円谷プロダクション 「ウルトラマンタロウ」より
シルエットだけ登場したエンペラ星人

満を持しての登場

そして「初登場」から33年後。

シリーズ40周年記念作品にしてM78ウルトラマンの集大成「ウルトラマンメビウス」のラスボスとして遂にその姿を表すことになる。

メビウスでの活躍を記載する前にメビウス及びウルトラ銀河伝説にて保管された設定から紹介しよう。

元々エンペラ星人は宇宙に存在する知的生命体の一人であった。しかし、何らかの事情で母星の太陽が消滅。滅びてしまった母星の中で唯一生き残った彼は宇宙を放浪する内に強大な闇の力を手に入れる。「母星の太陽が滅んだことがきっかけで超常的な力を手に入れる」というのはM78星雲のウルトラマンと同じであり、同じような事情がありながら「光」に目覚めたウルトラマンと「闇」に目覚めたエンペラ星人は正にコインの裏表。故にエンペラ星人は自らと正反対のウルトラマン達に激しい憎悪を抱くことになる。

強大な闇の力で数々の惑星をある時は従え、ある時は滅ぼし勢力を拡大したエンペラ星人はついにウルトラの星へと侵攻を開始する。

後にウルトラ大戦争(ウルティメイトウォーズ)と呼ばれることになるこの戦いは熾烈を極めたが、ここで真の力に目覚めたウルトラマンケン(後のウルトラの父)との一騎討ちで互いに重症を負う相討ちとなり自身は撤退。配下の怪獣軍団もウルトラの長老たちが開発した至宝「ウルトラベル」によって撃退され、ウルトラの星への侵攻は失敗に終わる。この戦いでエンペラ星人はウルトラマンたちへの憎悪を更に強めると共にウルトラの父との因縁が生まれることになる。

また、ここで彼が振るった闇の力はウルトラマンベリアルが闇落ちする遠因となる。

その後、ウルトラの星再侵攻のために力を蓄えていたエンペラ星人は「ウルトラマンたちが大切にしている星」として地球の存在を知り、ウルトラの星侵攻の前座として地球に目を向ける。

長い事怪獣や宇宙人が全く出現しなかった地球に再び怪獣たちが現れるように仕向けたのも彼。つまり「ウルトラマンメビウス」のラスボスにして全ての元凶。

目覚めさせた怪獣や仕向けた宇宙人達を利用して地球のデータを収集しつつ、ロボット兵器であるインペライザーや配下の四天王を戯れとして差し向ける。

そして、四天王の内3人が戦死、最後の一人が作戦失敗で退却すると失敗を認めない彼は退却した四天王を無言で粛清。ついに自ら地球人の前に姿を表した。

地球にインペライザーの大軍を送り込むと物量作戦でメビウスを倒して自分の力を見せつける。そして地球の降伏とその証としてメビウスを差し出せと要求。降伏した場合はウルトラマンに代わって自分が地球を守るが従わないなら地球を滅ぼすと地球人に揺さぶりをかけた。

折しも地球ではメビウスがGUYS JAPANのヒビノ・ミライだと知ってしまった一人の人間によって全世界にメビウスの正体が暴露されてしまったこともあり、民衆の中にはメビウスを差し出して降伏することを考える者が出てしまう。

しかし、GUYS JAPAN総監の演説によって地球人はメビウスを守りウルトラマンと共に侵略者に立ち向かうことを決意。エンペラ星人はついに本格的に侵略を開始する。

各地でインペライザーを暴れさせるが地球の危機に救援に駆けつけたファントン星人、宇宙剣豪ザムシャー、サイコキノ星人といった友好宇宙人たちの強力と各国GUYSの奮戦によってインペライザーは全滅。戦況の不利を見てついに自ら地球へ、地球人の反抗の中心地であるGUYS JAPAN前線基地フェニックスネストへと降り立ち、地球へ、ウルトラマンへ、そしてウルトラの父へ宣戦布告した。

(C) 2006 円谷プロダクション 「ウルトラマンメビウス」より
遂に降り立った暗黒の皇帝
 

フェニックスネストではザムシャーと対峙するが、宇宙に名を知られた実力者であるザムシャーを相手に一歩も動かず、文字通り指一本触れることすら許さず圧倒。そこへウルトラマンヒカリが駆けつけザムシャーと共闘し立ち向かうが、宇宙に名を知られた剣豪二人の剣を、これまた一歩も動かず片手でいともたやすく受け止めあしらってしまう。その後、邪魔者が動かなくなったのを見るとフェニックスネストを破壊しようとするがそれを庇ったザムシャーを殺害。ザムシャーが遺した刀を武器に立ち向かってきたヒカリに一太刀浴びせられるもすでに満身創痍のヒカリを追い詰める。傷ついていく仲間を救うべくミライが最後の力を振り絞ってメビウスに変身しヒカリと共に挑んでくるが二人のウルトラマンを相手にしてもなお一歩も動かずに圧倒。レゾリューム光線によってメビウスを消滅させ、その片手間の衝撃波でヒカリを変身解除へ追い込んだ。

勝利を確信しウルトラの父へ勝利宣言とも取れるテレパシーを送るエンペラ星人だったが、ここで想定外の事態が起きる。

駆けつけたウルトラ兄弟たちに励まされ希望を胸に立ち上がったとGUYS JAPANメンバーとの絆によってメビウスが復活。

そして・・・

「GUYS,sally go!」

「「「「「G.I.G! メビウゥゥゥゥス!!」」」」」

(ウルトラマンメビウス屈指の名場面)

メビウスとヒカリ、そしてGUYSメンバー達が合体した奇跡の姿「ウルトラマンメビウス フェニックスブレイブ」が出現。更に地球側はウルトラマンの光線エネルギーを増幅する最終兵器「スペシウム・リダブライザー」を起動。更にM78星雲からはウルトラ兄弟最強の実力者ゾフィーが参戦。メビウスとゾフィーの同時光線+スペシウム・リダブライザーによる強化光線に追い詰められながらも、それでも耐えウルトラマン側の要であるスペシウム・リダブライザーを破壊しようとするが、最後はフェニックスブレイブの最強技「メビュームフェニックス」を受け遂に敗北。自分が光に負けたことを認めながら光の粒子となって消えていった。

闇の世界に生きていた宇宙の皇帝は最後に光となって消滅していったのだった。

レゾリューム光線

エンペラ星人の必殺光線。

対ウルトラマン用の光線であり、ウルトラマンの肉体を分解消滅させる力を持つ。

劇中ではメビウスを分解消滅させたが、ウルトラマン2人と地球人5人が融合したフェニックスブレイブには無力であった。

これは対ウルトラマン用の光線であるため、相手が「純粋なウルトラマン」じゃないと効果が減少するという設定があるため。

しかし、そうは言ってもメフィラス星人を一撃で葬れる程には威力があるのに地球人が多く融合したフェニックスブレイブには無力というのも不思議な話である。もしかしたら地球人にはレゾリューム光線を撃ち破る何かがあるのかもしれない。

無双鉄神インペライザー

エンペラ星人が用意した自立起動ロボット兵器。

メビウス本編中盤に登場し、メビウスの光線を耐える強靱な装甲、全身の火器による殲滅力、バラバラにされてもすぐに再生する自己修復機能などを兼ね備え、メビウスはおろかウルトラマンタロウですら圧倒した。この時はGUYSメンバーとの絆でパワーアップしたメビウスによって倒されるが、エンペラ星人出現の際にまさかの量産型であったことが判明。エンペラ星人によって13体が地球に持ち込まれ各国のGUYSと戦闘した他、その物量作戦でメビウスを戦闘不能に追い込んだが、各国GUYSの奮闘や駆けつけた友好宇宙人たちの力で全滅させられた。

量産型による物量、倒すのに時間がかかる強靱な装甲と再生能力など時間制限という弱点がある対ウルトラマンを意識したと思われる部分が多い。

(C) 2006 円谷プロダクション 「ウルトラマンメビウス」より
インペライザー

総評

かつてウルトラの星に戦争を仕掛けた全ウルトラマンの宿敵という設定とそこから来る前評判の高さを引っ下げて登場し、自ら手を下さずともウルトラマンを圧倒できる兵器(しかも量産型)の存在や、自ら対峙した際には一切動かず、指一本触れることすら許さないという格の違いを見せつけるなどその姿は正に皇帝と呼ぶに相応しく、前評判の通りウルトラ一族の宿敵にしてシリーズ集大成のラスボスとして相応しい存在であった。どこぞのケツアタマザルとは違うのである。

最終回の決戦では「主役の完全敗北(しかも消滅)からの復活」「最終回限定の究極フォームの出現」「最終回限定の最終兵器の発動」「歴代ヒーロー(それも最強格)の参戦」という熱い展開の連続でありヒーロー大勝利の方程式が出来上がっていたが、それすらも覆そうと反撃を試みるなど、最後まで大物感を失わなかったシリーズ屈指の名ラスボスである。

一方で因縁の相手であり名指しで勝利宣言するほどに意識していたウルトラの父は地球に降り立つどころかウルトラの星から一歩も出ていなかったというのは物悲しいものがある。後の作品でウルトラマンベリアルが関わった時にはウルトラの父は自ら地球に降り立っている事から考えると、ウルトラの父には自分の手でエンペラ星人を討つことに拘りはなかったのだろう。自分が手を下さずとも後を託せる多くの戦士に恵まれていたのも大きい。ある意味、戦う意味すらなくすでに勝敗は決まっているという事なのかもしれない。

余談

後の作品にてエンペラ星人はウルトラの星再侵攻のために自らの力を高める鎧ウルトラマンの力を半減させる特殊なフィールドを用意していたことが判明する。

メビウス本編ではこれらは全く使っていなかった為、あれだけ大暴れしておきながら実は本気を出していなかったようである。

用意していたらなら使えよ!というツッコミが聞こえそうだが、あれだけウルトラの父に執着していた彼のこと、おそらくそれらの装備はウルトラの父との再戦用だったのだろう。地球侵略を前座と考えていたこともそれらの装備を使わなかった理由かもしれない。

ま、身も蓋もないメタい事言えば後付設定だし。

エンペラ星人との戦いで重症を負ったウルトラの父を介護したのがウルトラの母でありこれがきっかけとなって二人は結ばれることになった。つまりウルトラの父にとっては因縁の相手にして恋のキューピッドでもあり、エンペラ星人がいなければウルトラマンタロウとウルトラマンタイガは生まれなかったのである。

なお、この時に受けた傷の中で特に重症だったのが脇腹だったようで、ここは古傷として残っておりウルトラの父の弱点となっている。ウルトラ銀河伝説ではここをベリアルに攻撃されて敗北を喫した。

ウルトラマンベリアルが闇落ちしたきっかけの一つがエンペラ星人の強大な力に魅入られたというのは有名だが、M78星雲出身で闇落ちしたもう一人のウルトラマン、ウルトラマントレギアの闇落ちにもエンペラ星人の存在は関わっている。ウルティメイトウォーズから3万年以上、自身の消滅から数千年経った今でもその存在はM78星雲に爪痕を残している。

一方でベリアルが闇落ちしなかったらウルトラマンジードも生まれていないわけで、良くも悪くも後のウルトラシリーズに大きな影響を与えた存在である。









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