ウクバール永田。人は彼をそう呼ぶ。
彼は25年間、自分の生まれ故郷を探し続けていた。
「遠い町ウクバール」はウルトラマンガイア第29話のエピソード
あらすじ
陸戦チーム「チームハーキュリーズ」のリーダー吉田は幼馴染の庄司と飲んでいた。 互いに近況を報告し合う二人。庄司は宅配便のアルバイトを始めたという。 庄司「でさ、俺一日中トラック乗ってたんだよ・・・宇宙人と」 吉田「宇宙人とぉ?」 アルバイト初日。新人の庄司は宅配一筋25年のベテランである永田とコンビを組むことになる。 この永田と言う男、自分の事をウクバールという町から来た宇宙人だと思い込んでおり、仕事の同僚たちにウクバールの話ばかりすることから「ウクバール永田」と呼ばれ変人扱いされている人物であった。 仕事を開始した永田と庄司。 永田「ウクバールは常に風が吹いてるんだ。」 永田「ウクバールには階段がないんだ。」 永田「ウクバールは大きな雲に入ることもあるんだ。」 永田「ウクバールには楽団だってあるんだ。」 運転中、昼食中、配達中、他人がいてもお構いなしにウクバール、ウクバールと話し続ける永田。 永田「こうやって配達でいろんなところを回っているとさ、その内ウクバールに帰る手がかりが見つかるかもしれないだろ。」 最初は相槌を打っていた庄司も夕方にはウンザリしていた。 永田「ウクバールには時計が無いんだ。だから夕方5時になると一斉にサイレンが鳴るんだ。それを聞いてみんな家に帰るのさ。」 永田「ウクバールはきっとどこかにある。だって、俺の故郷なんだからな。」 庄司「あるある・・・。ウクバールはあるよ・・・。おっちゃんの頭の中にな。」 永田「え?」 庄司の一言に呆気にとられた永田は危うく追突事故を起こしそうになった。 庄司「よっちゃんXIGだろ?おっちゃんが地球人だって分からせてやってくれよ。」 自分の一言が永田を傷つけてしまったのではないかと心配になった庄司は、吉田に永田が地球人だと証明してほしいと依頼する。 エリアルベースに戻った吉田はハーキュリーズのメンバーと我夢に庄司からの依頼を相談する。 幼馴染たっての依頼ということもあって何とか力になりたいと思う吉田だったが、地球人の証明という漠然とした内容に頭を抱える。そんな吉田に我夢は自分が生まれた家を見て自分が地球で生まれたことを思い出せば自らを地球人だと認めるんじゃないかと提案し、永田の生家を探し出す。 我夢が発見した永田の生家へ向かった吉田。生家は永田が離れた後、誰も買い手がつかず廃屋となって今も現存していた。中には永田が住んでいたと思われる痕跡も発見される。 やはり、永田はただの地球人だったのだ。 一方、永田は庄司の言葉を受け悩んでいた。 25年も探し続けた故郷ウクバール。それが見つからないのは自分の頭の中にしかない空想の産物だからじゃないのか・・・。 思い悩む永田に電話がかかってくる。受話器を手にした永田は聞こえてきた音に驚き、すぐに歓喜の表情を浮かべる。 永田「ウクバール・・・ウクバールの風の音だ!」
主な登場人物
・庄司(演:寺島進) 今回のゲストにして主役その1。 吉田リーダーの幼馴染であり最近始めた宅配のアルバイトで永田と出会ったことで今回の騒動に巻き込まれていく。 吉田に永田を地球人だと証明してほしいという哲学的な依頼をする。 ・永田(演:不破万作) 今回のゲストにして主役その2。 自らをウクバールから来た宇宙人だと思いこんでいる変人。 ・吉田リーダー 陸戦チーム「チームハーキュリーズ」のリーダーで頼れるガチムチ男。 幼馴染の庄司からなんとも難しい依頼を受ける。 ・高山我夢 XIGのアナライザーにして我らがウルトラマンガイア。 依頼に悩む吉田にアドバイスを送る。が、今回の活躍はほぼこれだけである。
事の顛末
永田の生家を調べていた吉田に我夢から永田の現在の家の周辺に空間の歪みがあるという連絡が入る。 永田の家に向かった吉田はその途中で庄司を見かけ声をかける。庄司も永田の家へ向かっているところであった。 その日、永田は仕事を無断欠勤していた。25年間まじめに働いていた永田の突然の無断欠勤に庄司は昨日の言葉が響いているのではないかと心配し永田の御見舞に行くところだったのである。 共に永田の家に到着した二人に永田は受話器を差し出し 永田「ほら、ウクバールの風の音がする。ルクーが迎えに来るんだ!」 しかし、差し出された受話器の先、電話線は繋がってすらいなかった。 庄司「いいかげんにしろよおっちゃん!ウクバールなんてもんは無いし!ルクーなんていないんだよ!」 と思わず声を荒げる庄司だったが 吉田「まて庄司。聞いてみろ。」 庄司「なんだよ・・・う、嘘だろ・・・。」 受話器に耳を当てる二人。そこからは確かに風の音が聞こえていた。 風の音は強くなり、窓ガラスは震えだす。 永田「ルクー!!!」 永田の叫びに応えるかのように、窓ガラスを突き破る衝撃と共に怪獣ルクーがその姿を表す。 怪獣の出現にパニックに陥る町の人々。怪獣から逃げる人々に逆らうように永田はルクーを目指し走り続ける。庄司と吉田は永田を追いかけるがパニックの中で永田を見失ってしまう。 ルクーもまたひたすらに前進を続け、XIGファイターの攻撃も現れたガイアの静止も意に介さず歩き続ける。 全く静止しないルクーに対しガイアは光線の構えを取る。が、その瞬間、夕暮れの街にサイレンが響き渡る。 突如鳴り響いたサイレンに構えを解くガイア。庄司と吉田はサイレンの鳴る空を見上げる。 その中で庄司は永田の言葉を思い出していた。 永田「ウクバールには時計が無いんだ。だから夕方5時になると一斉にサイレンが鳴るんだ。それを聞いてみんな家に帰るのさ。」 庄司「まさか・・・。」 一方、同じく空を見上げる永田。彼の目には見えていた。25年間探し続けた自分の生まれ故郷が。 永田「ウクバール・・・!」 サイレンが鳴り終わるとルクーは姿を消していた。 永田もまた姿を消していた。 そして、この日以降永田の姿を見た者はいなかった・・・。 数日後、再び永田の生家を訪れた吉田と我夢。 吉田は瓦礫の中からあるカレンダーを見つける。 1966年と書かれたそのカレンダーには、空中に浮かぶ町ウクバールと守護獣ルクーの姿が描かれていた。永田が子供の頃に見たカレンダー。彼が探し求めた故郷はこのカレンダーに描かれていたのである。 吉田(永田は幼い頃に見たカレンダーの絵を自分の故郷と思い込んだのか。それともウクバールは本当にあってようやく永田はそこに帰ることができたのかもしれない。) 吉田「彼にとってウクバールは必要だったのかなぁ・・・。」 我夢「え?ウクバール?」 吉田「・・・遠い町さ。」
登場怪獣
・守護獣ルクーリオン ウクバールという町を守護する守護獣(と言われている)。劇中ではルクーと呼ばれる。 シンバルのような足音を鳴らしながら何かを目指すように前進を続けたが、それだけであり破壊活動を行うことはなく迎撃に来たXIGやガイアに対しても反撃すらしなかった。 謎のサイレンが鳴り終わると同時に幻のように姿を消した。 ちなみに、脚本家としてはブリキのロボットのような怪獣をイメージしていたが、監督の尻尾を持つ怪獣を出したいという要望から現在の姿に落ち着いたらしい。
概要
リアリティ重視のハードSFという路線を取ったガイアの中ではひと際異彩を放つエピソード。 ウルトラ版世にも奇妙な物語と言われることも。 主人公である我夢とガイアを始めレギュラー陣の活躍がほぼなく、ゲストである庄司と永田を中心に話が展開されます。 ウルトラマンと怪獣の戦闘もほぼ無いに等しく、特撮お決まりの派手に壊れるミニチュアと言った映像も無いのではっきり言って子供にとっては退屈ですし、ウルトラマンでやる必要ある?と突っ込まれるエピソードでもあります。 しかし、ウルトラらしからぬ不思議な雰囲気と誰もが空想の産物だと思っていた物が現実へと現れる演出のインパクトからウルトラマンガイアのエピソードの中でも非常に印象に残るエピソードとなっています。 結局、ウルトラマンガイアの劇中でウクバールの事はこれ以上言及されないんですが、そういった事を考えるのが野暮。考えるんじゃない感じるんだというエピソードですね。 そしてこのエピソードを担当した脚本家は太田愛さんです。 私のイチオシの脚本家さんです!
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